ATCQとは全く異なるが、また別の意味でヒップホップシーンに大きな衝撃を与えたのがオークランド出身のラッパー、MC Hammerの3rdアルバム(メジャー2作目)『Please Hammer, Don’t Hurt ‘Em』(2月10日発売)だ。日本でもダンスブームの流れで有名となった「U Can’t Touch This」の大ヒットによって、このアルバムはリリースの翌年にはアメリカ国内で1,000万枚以上を売上げ、ヒップホップアーティストとして初のダイアモンドアルバムに認定された。しかし、音楽性だけでなくビジュアル面も含めて、当時としてはポップ過ぎた彼のスタイルは数多くの同業者から批判を浴び、ひとつ前の2ndアルバム『Let’s Get It Started』の頃のものを含めると、L..L. Cool J、3rd Bass、ATCQ、Ice Cubeなど実にさまざまなアーティストが曲中で彼をディスっている。あまりにも作品が売れすぎたことに対する妬みも少なからずあったであろうが、ヒップホップというものの定義が今よりも非常に厳格であった時代ならではのエピソードとも言えるだろう。