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THE DESIGNER
設計者という起点
One Man's Box
系譜の上流には、1人の人間がいる。Roger Linn。1980 年、彼は本物のドラムを録音した音を鳴らす世界初の本格的なプログラマブル・ドラムマシン「LM-1 Linn Drum」を世に出し、続く「LinnDrum」で80年代のポップスの音を塗り替えた。打ち込みのリズムが、機械の冷たさではなく人の手の揺れを持てる。その思想を、彼は1台の楽器に凝縮しようとしていた。
1988 年、Linn は日本の Akai と組む。生まれたのが MPC60、MIDI Production Center である。サンプラーとシーケンサーとパッドが1つの箱に収まり、本体の前面には Roger Linn 自身の署名が刻まれた。これは単なる機材ではなく、1人の発明家の設計哲学が形になった署名入りの作品だった。
だが Linn の最大の発明は、音そのものではなかった。それは「時間」の方にある。打ち込んだリズムにどう揺れを与えるか。その一点が、この一族の運命を決めることになる。次章で、その発明の正体を見る。
